この時期になると、来年度入学を予定している園児たちが小学校に来て、「就学時健康診断及び知能検査」というのが行われます。
健康診断と知能検査を行い、入学にあたって配慮すべき点がないかどうかなどを確かめるのです。小学校にとっては、健康面は専門外ですのであまり気にしないのですが、園児たちの様子や知能検査の結果はめちゃくちゃ気になるところです。
特に低学年の先生方は顕著で、この就学時検診で来年の一年生の様子が見えてくるようです。
来年の一年生は、手がかかりそうなのか、あるいはそうではないのか。
そんなところを見極めるのです。
長い教員生活をしていて、この就学時検診を見て思うのは、年々学校というものに適応できないなあと思う子が増えているということです。
その傾向は今年も同じでしたが、今回は予想を遥かに超える状態でした。
受付を済ませて体育館でお家の人と待っている時から、走り回る子や奇声を発する子がたくさんいたのです。
みんな緊張して、椅子にちょこんと座っている子が例年であれば多いのですが、緊張感のようなものが全く感じられませんでした。
また保護者についても、自分の子が大声を出したり、お友達とはしゃいでいたりしても、止めようとしないことも気になりました。
来年度は大変だ…と一瞬で思ったのです。
学校生活に適応できないというのがどんなことかというと、
・全体に対して話していることを聞けない、自分に言っているという意識が持てない
・黙って座っていられない、一ヶ所に居れない
・ぼーっとしている、集中力がない
・言葉の理解力が足りない、知識の蓄積が無い
といったあたりでしょうか。
年々増えているのは間違いないと思います。個々の特性について、ASDやADHD、LDやHSPなどの色々な名前がつき、詳しく細分化されてきているように、特性を持った子というのはたくさんいるのです。と同時に、いわゆるグレーゾーンの子も同じようにたくさんいるのです。
まあ、昔からこういう子は一定数はいたと思われますが、周囲の強い指導によって矯正されてきた子も多かったように思います。それがいいか悪いかはここでは述べないことにします。
とにかく今は強い指導なんてできませんから、適応が難しい子が入学すると、周囲の子がかなり影響を受けることになるのです。
一人二人ならまだいいですが、それこそそれ以上となると、もはや担任がどうこうできるレベルにはありません。
学級崩壊に向かっていきます。
その時最も被害を受けるのは、その学級にいる普通の子どもたちなのです。
そこで結局私が思うのは、障害などは細かく細分化されてきていて、特性などもわかっているのに、「普通の学級にいることが良い」という風潮がまだ全体に色濃く残っていることは問題なのではないか、ということです。
もっとたくさんの選択肢があり、その選択についても移籍の自由度が高ければ、
「普通学級に一週間いたけどちょっと無理だった。来週から支援学級に移って学習します」
なんてことが可能なのです。
しかし現実問題として、段階を踏んでいかなければならない過程があり、教育委員会の就学指導委員会や保護者の同意の書類が必要な訳です。その説明の過程で保護者は億劫になり、なかなか前に進まない、といった児童も実際に多くいます。
教員も親も、そして一番は当該児童にとって、おそらく一番気持ちが穏やかに過ごせる道に辿り着くまでがとても大変なんですよね。
そして第三者的に、この子はこっちの方が合っている、支援学級に行ってはどうか、と言える立場の人がもしいれば、もっとスムーズに事が運ぶのではないかとも思います。
当然、学校における子どもたちへの指導の仕方も、変化のスピードを早めていかなければならないと感じます。
集団指導から個別最適化の指導へ。
学校に余剰人員がいれば、また違った対応ができるかもしれません。
しかし実際はほぼ余剰はゼロです。
まあ、わかっているけどなかなかできない、というのが現実であり、今すぐにはとはいかないでしょう。
学校教育が、社会の変化についていってないなと感じてしまいます。
学校教育の崩壊への足音が聞こえてきている、という表現もあながち大袈裟ではないのです。