私は教員を25年以上やっているわけですが、昔は少なかったのに、年々増えているなと思うことがいくつかあります。
その内の一つについて、今回はお話ししたいと思います。
ではそれは何かということですが、
「家の人の前では大人しく、学校で本性を出す子」
が増えている、ということです。
例えば、ある児童が同じクラスの子を叩いたり暴言を吐いたりと言ったトラブルが重なり、保護者にそれを伝えた時に、
「えー、家ではそんなこと全然無いんですけど。家ではとてもいい子なので、相手の子に先に酷いことをされたとか、そういうことがあるんじゃないですか?」
などという保護者が増えているのです。
これは私の感覚なので、そんなことないと思うという方もいるとは思いますが、長年教員をやってきて、年々こういった事例は増えていると思います。
こういう人もいます。
親に対して友達の前で「死ね」とか「アホ」といった暴言を言っている事実がありながら、
「うちの子はみんなの前では強がってそういうふうにしてしまうんですよ。帰って私と子供だけになると、とってもいい子なんです。だからご心配には及びませんので」
これらの例で言えることは、子どもたちが「自分の家で、親に対してよく見られようとしている」ということです。
昔は保護者から、
「うちの子、学校でいろいろやらかしてませんか?家で本当に言うこと聞かなくてほとほと困ってるんですよ」
という言葉をよく聞いたものです。
実際そういう方は今も多いのですが、この言葉を言う保護者には、
「そうですか?そんなことないですよ。お子さん学校ではしっかりやってますよ」
と返すことが多いです。
まあ中には「そうなんですよー。いろいろありまして…」となるパターンもあるのですが、それは少ないですね。
さて、先程の例が何を示しているのかというと、
「学校が子供のストレスの捌け口になっている」
ということだと思います。
本来、社会生活の一環である学校では、我慢するところはして、みんなが気持ちよく過ごせるように考えて行動することが求められます。
しかし、家で大人しくしている先程の例の子だと、子供同士というある意味やりたいようにできる環境が整ったことで、家で溜まった鬱憤を晴らしてしまう、といったことにつながってしまうのです。
もちろんこれはあくまで一部の子に言えることですけどね。
問題行動が重なる児童について保護者の方に様子を見にきてもらうこともありますが、遠くからそっと見てもらうようにしています。親が来ているのがわかると途端に大人しくなる子も多いからです。参観日にやたら行儀良くなるのと一緒ですね。
本当の姿を見てもらうためにそうする場合が多いです。
では原因がどこにあるかということについてですが、経験上パターンは2つあるかなという感じです。
一つは溺愛型。
親が子を溺愛して、言うことをなんでも聞いてしまうといった感じでしょうか。子供がいい子を演じて親を満足させるように心がけてしまっているパターンです。まあ我儘を言い放題なので、その我儘が通じない場所に来れば、自ずと不満が爆発するわけです。
もう一つは恐怖型。
親の暴力や暴言がひどいため、家で大人しくしているパターンですね。学校には暴力で監視する人はいません。ある意味安心して好き勝手できる状況になるわけです。また、学校で不満が溜まった時は、普段自分が家で親にされている暴言や暴力を、誰かにしてしまうと言ったことが多いです。
多様な児童の実態に合わせて個に応じた指導が求められる中で、集団指導が基本である学校の教育力は揺らいでいます。
より家庭の教育力の重要性が増しているのかなと思います。
自分の子供を一番見ているのは、親なのです。
見たくない部分に目を瞑ったり、出る前に隠してしまったりしないで、しっかり向き合っていきたいものですね。
(最後は親としての私自身に言ってしまいました)