今、学校の役割は大きく変わろうとしています。
実はすでに予想されたことであり、現在の学習指導要領にも反映されていることではあるのですが、学校現場で実際に行われている現状と、まだまだギャップは大きいかなというのが私の印象です。
文部科学省は、今から10年ほど前に、現在の学習指導要領への改訂に向けて「2030年の社会と子供たちの未来」という論点整理を行っています。
この分析はかなり的確で、これからの子供たちに求められる力について納得できる部分がかなり多いです。
この中に「新たな学校文化の形成」という項目があります。
「これまでの蓄積を踏まえ評価しつつ、新しい時代にふさわしい学校の在り方を求め、新たな学校文化を形成していく必要がある」
と述べているのです。
子供については、
「予測できない未来に対応するためには、社会の変化に受け身で対処するのではなく、主体的に向き合って関わり合い、その過程を通して、一人一人が自らの可能性を最大限に発揮し、よりよい社会と幸福な人生を自ら創り出していくことが重要である」
と述べています。
受け身ではなく、主体的に向き合う、というところがポイントですね。
その上で、重要なこととして大きく4点について述べています。
①解き方があらかじめ定まった問題を効率的に解ける力を育むだけでは不十分である
②蓄積された知識を礎としながら、膨大な情報から何が重要かを主体的に判断する
③自ら問いを立ててその解決を目指す
④他者と協働しながら新たな価値を生み出していく
これが今の子供たちが付けるべき力と言えるでしょう。
その上で学校には、
「子供たち一人一人の可能性を伸ばし、新しい時代に求められる資質・能力を確実に育成していくことや、そのために求められる学校の在り方を不断に探究する文化を形成していくことが、より一層重要になる」
としています。
学校としての在り方を探り、いわゆる新たな学校文化を形成していかなければなりませんよ、と言っているわけです。
新たな学校文化、です。学校の役割は大きく変わる必要があるのです。
ですが、今現在、学校が変わってきているかといえば、微妙だと思います。
現場の教員は、子供たちにこうすべきだ、これが正解だと教えることがまだまだ多いです。
それはなぜか。
考えさせて答えを出させるより、早いからです。
なかなか結果の出ないことに向かわせていくのは、教員にとっては辛いものです。これは教員の良くないところでもあるのですが、「子供に失敗させたくない」という思いが強いのです。教員自身にそれらの力をつけさせるようなノウハウが無いことも一つあるでしょう。
そして、学習内容はこの時期までにここまでやるとか、行事に向けてこの日までに仕上げなければならないとか、時間に縛られている部分も大きいと思います。
精神的、時間的なゆとりが教員側にもあれば、今やろうとしている方向性に向かっていけるような気もするのですが、完成したものを提示しなければならないという呪縛に囚われているとも言えます。
本当の意味で「主体性を身につける」には時間が掛かります。
ここで「本当の意味で」と言ったのは、形だけの主体性はすぐに付く(身に付いたように見える)ということです。子供たちは敏感です。こんな答えを求められていると感じた上で答えるのは割と容易く、時間が掛かりません。
子供たちが必要感を感じて、自分で考え、他者と協働して取り組んでいくことは、一朝一夕には行かないと思います。
学校や教員側も、子供の先導をするように走るのではなく、子供と伴走して走るようなイメージをもって、主体的に「新たな学校文化」について考えていかなければなりません。