私は一応社会科が専門なのですが(と言っても特にこれといって誇れるものはありませんが)、学びの中で意識していることがあります。
それは、「身近なものやことに落とし込む」ということです。
先日6年生と世界の各地で起きている紛争についての学習をしました。
紛争と言っても、子どもたちにとってはニュースや新聞で見る・聞くものです。
決して身近なものではありません。
とはいえ6年生にもなると、知識としてはそれなりにある子もいますから、いろいろなことを知っている子も多いのです。
しかし、私が大切にしたいのはその知識だけでなく、自分の身近にある事柄との関係についてです。
この時間では紛争が起こる原因についても取り上げます。
紛争の主な原因として、
①宗教の違い
②民族の違い
③政権の不安定
④大国の介入
⑤資源や土地の奪い合い
などが挙げられます。
子どもたちは、ちょっと尋ねると今あげたようなことは答えてくれますし、その他にもいろいろな理由を考えます。
「素晴らしいね、みんなは」
と褒めつつ、学習のまとめを終えるあたりであえて時間を余らせ、私は尋ねます。
「見た目をバカにしたりして喧嘩になったり、仲間外れをしたりすることってあるよね。民族の違いで紛争が起こるのとあまり変わらなくないかな?」
子どもたちは「あ、そうかもしれない」といった顔で聞きます。
一つ一つをちょっと噛み砕いて考えてみると、自分たちの身の回りで起こるような些細な争いは、紛争の要因と似ていることに気づいていくのです。
「○年生の時、学級のけじめがあまりなくて雰囲気が悪くて、しょっちゅう喧嘩してた。政権の不安定に似てる」
「上の学年の人に無理やり言われて、悪いと思いつつもいたずらをしたことがある。大国の介入だ」
「考え方の違いで人と合わないということもあるし、宗教とまではいかないけれど、信じているものをバカにされて許せなくなったことがある」
「ものを奪い合うのはしょっちゅうやってるかも。ボールをどっちのグループが使うかとか、この場所はうちらのものだ、とか」
たくさん出てくるのです。
私は知識として覚えることももちろん大切だとは思いますが、そこから何を考えるか、自分の生活にどう役立てようとするか、これらが一番大事だと考えています。
子どもたちに、それらについて考えるちょっとしたきっかけを与えることは、授業をしている教員が最も適しているのではないでしょうか。
全部の時間でとはいきませんが、どの教科でもこのような考え方はできるはずです。
この意識をもっていると、我々教える側も、この教科書の内容は日常生活のどの場面に役立つかを常に考えるようになります。
オープンエンドであまり結論を押し付けるようにしないことが注意点としてありますが、「考えるきっかけづくり」を意識して授業をしていきたいものです。