「これはやっちゃダメだ」
「こうしないといけませんよ」
ではなく、
「どうしてダメなのかな?」
「このままだとどんなことが起こると思う?」
と問いかけましょう。
私はこれまで、子供自身に考えさせるために理由を考えさせたり、「あなたはどう思うか」と投げかけてみたりすることでより納得感が生まれるのではないかと言ってきました。
この考えを実践することはとても大切だと思うのですが、気をつけなければならない点もあります。
それは、正解を持たずに「どう思う?」
と聞いていないか、ということです。
私の勤務する学校には、学童保育(放課後児童クラブ)も同じ校舎内に設置されています。
そこに通う主に低学年の子どもたちは、学校の授業が終わると、学校の児童玄関から校舎内を通り、学童保育用の玄関に外ズックを持っていくという流れになっています。
学童保育に通う低学年の子は他の学年に比べて早い下校時刻になるので、上の学年が掃除をしている時間に靴を持って移動する場面もあるのです。
そんなある日、玄関の掃除の担当の教員が、
「いやー、学童の子達がさー、5年生が掃除している最中の児童玄関に、靴の裏をパンパン叩いて土落としていくんだよなあ。あれ何とかならないかなあ」
と呟いていたのです。
これはと思い、私は管理職に問題提起しました。
「低学年の子どもたちに考えさせるチャンスです。5年生の気持ちや公共の場所の使い方について、どう思う?と問いかけたいと思います」
私的には、何も疑問を持たず言ったのですが、管理職からこう返ってきたのです。
「考えさせるのはいいと思う。でもじゃあ何が正解なのか、こっちである程度の答えを持っているのか?外ズックを持って校舎内を移動することを考えると、玄関で土を払い落とすのはある意味正解だ。あらかじめ土を払い落とす場所を用意しておくとか、考えた上でちゃんと答えが出せる状況を作らないといけないんじゃないか?」
なるほどなと思いました。
私は子どもたちに考えさせることにばかり思いが巡って、ちゃんと考えさせる土台を作っていなかったのです。
今の私の流れで子どもたちに問いかけると、表面上は「掃除の子に迷惑がかかるから土を落とすのをやめます」とか、「玄関に土を落とすのは良くないと思う」などという発言をするでしょう。
しかし心の中では、
「じゃあどうすればいいのさ」
「どこに土を落とせばいいの?」
「校内に土が入らないようにやってるのにさ…」
なんてことを思っているかもしれないのです。
「どう思う?」と子供に問いかける前に、まず自分自身に問いかけてみて、いくつかの答えを心に持った状態で聞くことが大切だなと思った出来事でした。
ただ、あまりはっきりした答えを持ちすぎると、押しつけになるので、そのバランスは難しいですけどね。
考えの幅を持たせつつ、答えを出せる状況はちゃんと作って、そして問いかける。
その大切さを感じたのです。