学校での勉強というのは、そもそもずっと昔から、学校教育というものが導入されるようになってからずっと、本来社会に出た時に役立つ知識や技能を身につける場でありました。
しかし、この概念はずっと存在しながらも、いつの頃からか受験や進学のための勉強となり、より良い学校に入るために勉強を頑張る、より良い会社に入社するためにより良い進学先を、といった要素が強くなって現在まで続いてきているのかなと思います。
ただ、昨今、我々が何となくもっていたこの社会通念が崩れつつあるのも確かだと思います。大きく変化する世の中で、良い学校に入って良い会社に就職する、という選択肢だけではないということに多くの人が気づいてきた、というのが現在の流れなのではないでしょうか。
そう考えた時に、社会に出てから求められる力を、学校でつけることがより重要になってくると思うのです。
経済産業省が提言しているものに「社会人基礎力」というものがあります。
社会人基礎力とは、2006年に経済産業省により「多様な人々と仕事をしていくうえで必要な基礎的な力」として定義された概念です。
社会人基礎力を構成する3つの能力と12の能力要素に分けられているのですが、これを学校での学習に当てはめて応用していくと、子どもたちが社会に出てから求められる力をつけることができると思うのです。
具体的にはこのようなものです。
能力①:前に踏み出す力(アクション)
必要な能力要素
・主体性:物事に進んで取り組む力
・働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
・実行力:目的を設定し確実に行動する力
能力②:考え抜く力(シンキング)
必要な能力要素
・課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
・創造力:新しい価値を生み出す力
・計画力:問題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
能力③:チームで働く力(チームワーク)
必要な能力要素
・発信力:自分の意見を分かりやすく伝える力
・傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
・柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
・情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
・規律性:社会のルールや人との約束を守る力
・ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力
全てとても大切なことだということはわかると思います。これをこのまま当てはめても良いとは思うのですが、小学校の場合で考え、大事な要素をある程度整理すると、こんな感じになるのかなと思います。
①課題発見力
自分で何が問題になるか考え、課題設定できる力
②情報収集力・情報処理力
問題解決に必要な条件は何か、無駄なく解決するために必要な条件は何かを考える力
③計画的思考力
どんな解決方法があるか多面的に考えたり、結果を見通したりしながら取り組んでいく力
④思考修正力
グループの意見を参考に考えを修正したり、より効率的な方法などを考える力
⑤協働的解決力
さまざまな視点からの意見を参考に、作り上げていく力
⑥実行・発信力
自らの考えを実行に移したり、その考えを他の人に積極的に伝えていく力
この観点で日常の授業づくりを行っていくと、自ずと社会で通用する力を身につけることができるのではないかなと思うのです。
決して難しいことではなくて、普段取り組んでいる授業も当てはまるものが多いはずです。ただ、教える側に意識として、今やっている学習は「今」のためにやっているのではなくて、その先の「未来」のためにやっているんだ、という意識はもっていたいですね。