学校行事も選ぶ時代になってくるのでしょうか。
私の住む地域は豪雪地帯です。冬になると、時には1メートルを超す積雪があります。
雪がたくさん降る街ですから、その特色を生かした行事もあります。
その一つがスキーです。
私の勤務する学校では、地元のスキー場でのスキー教室があります。朝から午後まで、その日はスキーを思い切り楽しむ一日となります。
子どもたちの成長速度は大人とは全く違います。1日でとてもうまくなるのです。ペアのリフトで交代で私の隣に座り、いろいろな会話をするのもまた楽しいものです。
そんなスキー教室ですが、私の街でもやめる学校が出てきたり、時間を短くしたりと、徐々に縮小の方向に向かっています。
これには、行事は精選して学習時間の確保を優先しようとか、働き方改革を進めようとか、そういった理由もあるのですが、大きな要因となるものが2つあるのです。
一つ目は、経済的な負担が大きい、ということです。
スキーの用具は安くはありません。子供用の安いセットでも2万円位は掛かります。加えてそこにスキーウェアや帽子、手袋、ネックウォーマーなどを準備しなければなりません。
そうやって揃えた道具も、子供はすぐに大きくなりますから、2シーズン使えばまた新しいものが必要になります。
少し前であれば、近所の知人からお下がりをもらったり、学校でいらなくなったスキーを回収して譲渡したりということもありましたが、今は人間関係の希薄さもあり、なかなかうまくいかなくなってきています。
さらに、児童数減もあり、スキー場までの往復のバス代も年々増えていく状態です。
もう一つの大きな要因は、安全面です。
スキーなどのウインタースポーツ経験者ならわかると思いますが、怪我の可能性は回避できません。何百人も引率していけば、確率は高くなります。
怪我のリスクを減らすため、グループの人数を少なくすることで目が届きやすいようにするのですが、そのためには保護者や外部のコーチが必要になります。
学校としては良かれと思ってそのようにしているのですが、保護者の中には外部コーチの指導の仕方についてクレームをつける人や、保護者コーチの所には入れないで欲しいなどの要望を出す人もいます。
どれだけ気をつけていても、怪我はしてしまう時がありますし、怪我をした児童の保護者としては、「スキーに行かなければ」という気持ちになることも仕方ありません。
もちろん、雪国ならではの特色を生かした行事なのでぜひ今後も続けて欲しいという声がたくさんあるのも事実ですが、こういった流れでスキー教室を取りやめる学校が徐々に増えていっているのです。
個人的には、私は学校が何でも抱える必要はないという考えなので、スキー教室をやめることに異論はないのですが、この考えでどんどん進んでいくと、結果的に格差を生んでいくことにはなるんだろうなとは思います。
経済的にも時間的にも余裕のある家庭はたくさんの経験を積み、そうでない家庭は全く経験しないで育っていく、このようなことになっていくのではないかと思うのです。
最近は、スキー教室の日は欠席する、といった児童も毎年数名出てきています。
これはスキーの話ですが、これからは学校行事も保護者や本人が選択する時代になってくるのでしょうか。
「うちの子は走るのが嫌いだから運動会は欠席します」
「学習発表会の日の近くにピアノのコンクールがあるのでそっちに専念させたい」
なんてこともこれからは出てくるかもしれません。というより、もうすでにあるのかもしれません。
個の時代になってきていますから、保護者や本人は出たくないことには無理をさせないようになってきても不思議ではないですから。
行事の精選については、学校が保護者の意見を無視して進めることはできませんから、こういった流れが大きくなってきて初めて加速していくのかもしれませんね。