私は教員生活25年以上になります。
かなり長いこと勤めてきた私ですが、学校現場ではいろいろなことが起こります。こんな私でも初めて出会うことは今だに多いのです。
先日のことです。
今年度卒業する6年生について、問い合わせが進学先の中学校から来ました。
名札や氏名印を作る関係で、使われている漢字の確認をしたいということでした。
みなさんもご存知の通り、人の漢字というのは多岐に渡ります。例えば「斉藤」の「斉」の字一つとっても、
「斉」
「斎」
「齋」
「齊」
というように何種類もありますよね。
間違えては大変ですから、これを確認していく作業が必要になるわけです。
今説明した「斉」のような漢字は、JIS規格に元々登録されている漢字ですからまだ良いのですが、外字と呼ばれる通常の変換では出てこない文字もあるのです。
私の学校でも、JIS規格の文字コードにない漢字を使っている苗字が数件あります。
そういった漢字は、パソコン上のフォントでは出てこないので、もともとある近い漢字を加工し、新たな漢字を作って登録しているのです。
また、これ以外にも、人名用漢字には特殊な例があり、普段当たり前に使っている漢字ではありながら、一画だけ書き方の違うものなどもあり、もうそれはそれはさまざまなのです。
先程の中学校からの問い合わせの話に戻しましょう。
問い合わせのあった児童数件については、こちらでも把握していたので、中学校に返答できたのですが、一件だけわからないものがありました。
その児童(Aさん)は、名前の漢字が一画だけ特殊な書き方をしているのですが、これであってますか?
というものでした。
中学校は教育委員会から送られた入学者名簿という資料をもとにして聞いています。
これは、いわゆる戸籍に書かれた文字をそのまま記載していますから、正しいと思われるのですが、我々小学校側は初めて聞いたのです。
担任に確認してもらったところ、保護者は何と
「えっ、そうなんですかー?」
「なんか役所から送られてくるものは、書き方がちょっと違うなーとは思ってたんですよねえ」
「違う漢字だとは思いませんでしたー」
ということでした。
つまり、保護者も知らなかった、ということになります。
戸籍上は特殊な漢字となっているものの、今後も普段は今までと同様、普通の漢字を使いますということでした。
当該の児童Aさんにも担任は伝えました。
「えっ、そうだったんですか?なんかショックですー」
と驚いていたそうです。
まあ、深刻な感じではなく、苦笑いしながらだったそうです。
こういう例もありますが、逆に
「学級通信に載ってある、うちの子の苗字が違う」
と、すぐに指摘してくる家庭もあります。
それももちろんわかりますよね。大切な苗字ですから。
さて、私の学校では、この後Aさんの公簿と書類の訂正をすることになります。
公募と呼ばれる指導要録や出席簿などですね。
この間違いに気付けたのは、おそらくAさんが入学した時だけだったでしょう。
中学校のように教育委員会から入学者名簿が届きますからね。戸籍の漢字をきちんと確認できるのはこのタイミングしかないわけです。
保護者の書く漢字は全部違っていたのですから。
何年も間違えたまま、ということも時にあるんだなあと感じる出来事でした。